キッチン会議

LIXIL Link to Good Living

キッチンの前には座らない
立って集うというキッチンのかたち(前編)

PUDDLE Inc. 加藤 匡毅・加藤 奈香さん

取材 | 2016.5.20

今回はLIXIL主催「“キッチンで暮らす”施工事例コンテスト」金賞受賞の加藤さんのオフィスにお邪魔して、受賞した城崎の住宅のキッチンについて取材しました。
この城崎の家のオーナーTさんは加藤さんと10年来の友人であり、クライアントで、Tさんは兵庫県の温泉街である城崎温泉に移住。引越し好きなTさんは、今までにも何度となく加藤さんにリノベーションを依頼されていたそうです。奥様は漫画家、ご主人が主に子育てと家事という暮し方をされてきたそうで、現在は、アートセンターの館長です。物好きなおふたりは、こだわりの家具やアートが多く、上の整然としたものの置かれている写真からは想像できませんが、実は整理整頓が得意ではないそうです。そうしたクライアントとの悩みを今回はあえて「見せる収納」という方法で課題を解決し、小学生になる長女の家事への参加も期待してあらゆる収納には扉をつけないというチャレンジをしたようです。

長さ4メートルのキッチンは、暮らしの真ん中に置かれています。下の写真のようにご主人はいつもここで多くの時間を過ごすとのことです。図面を見てください。この家には2つのダイニングがあります。一つはキッチンの前のダイニング、そしてもうひとつは右奥に子供の遊び場を兼ねた見晴らしのいい床座のダイニングです。子供のプレイスペースもかねていて、キッチンからは常に様子が伺えます。このダイニングの奥には(右下)奥様の仕事部屋を用意し、家で仕事をする奥様がある程度のプライバシーを持ちながらもゆるやかにこのダイニングに接しています。この2つのダイニング、食べる場所をその時々の状況に合わせて選択しながら暮らしに変化をつくっていこうという、加藤さんが提案する際にこだわったところです。

この家はかつて芸子さんたちが集う「検番」という大空間のある稽古場でした。リノベーションをするにあたって天井を剥がしたところ、そこから現れたのが写真にある大きな梁、トラス構造を補強する板目が際立っていました。加藤さんはこの期せずして現れた梁をデザインの基本に据え、それに全ての素材やデザインを合わせて大胆なキッチンが生まれたと語っています。天板はアルミの一枚板、下の箱は大工さんが造作で作れる簡単な構造に、収納は扉をつけずに、ダイニング側にはこだわりの食器やお気に入りのものを飾ることにしたようです。そしてお子さんも一緒に整理整頓をするようになり、好きなものを選んで置くことで自分たちにとって大切なものを自然に取捨選択が出来るようです。キッチンの高さはあえて高めの910ミリメートルとし、座るのでなく、周りに集まる人も立って会話をします。料理好きなご主人も大満足。使いやすく、そしてキッチンを中心とした暮らしが実現したようです。
このキッチンの高さ910ミリ、立ってコミュニケーションをするというのはPUDDLEの加藤さんのこだわりでもあります。この考え方をいろいろなかたちで実現させています。そのことについてもう少し詳しくお話を伺ってきました。次回はそのことについてお話ししたいと思います。

PUDDLE Inc.
Architect / Designer 加藤 匡毅
一級建築士
工学院大学建築学科卒業後、隈研吾建築都市設計事務所、IDÉE、GEOGRAPH共同設立。2012年3月PUDDLE Inc.設立。
受賞歴:「宇宙エレベーター デザインコンペ」最優秀賞・特別賞受賞。博報堂ケトルオフィス:グッドデザイン賞受賞。LIXIL主催「“キッチンで暮らす”施工事例コンテスト」金賞受賞。

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